日々の思いを本気で伝える!修造コラム

2018年09月08日錦織圭選手、決勝進出ならず…

男子シングルス準決勝 錦織圭 vs ノバク・ジョコビッチ

2014年の準決勝で勝利したのは圭だ。「圭にだけは負けたくない」ではなく「圭にだけは勝てない」とジョコビッチに思わせるようなテニスをして欲しい、僕はそう願いながら解説ブースに入った。

圭はジョコビッチに13連敗しているが、実は圭がジョコビッチを苦手なのではない。ジョコビッチが「圭にだけは負けたくない」という思いが強いのだ。なぜなら2014年全米準決勝、まさに同じ舞台で絶好調ジョコビッチを撃破し圭が決勝へと駒を進めた。ジョコビッチにとっては悪夢の試合だった。その苦い経験以降、ジョコビッチはどんなに調子が悪くても、圭との対戦となるとありとあらゆる手を使って異常なまでに勝ちに執着するテニスをするのだ。

何としてでも圭に勝ちたいと思っているジョコビッチは、どんなことを仕掛けてくるのか。

「いやらしいプレー」ジョコビッチはいろんなプレーの引き出しを持っている選手だ。その引き出しを全部使って、とにかく圭が嫌がるプレーを徹底して出してくる。

「観客あおり」準々決勝もそうだったが、どの会場でも圭の方が声援が多い。だからこそ、ジョコビッチは必要以上に頻繁に両腕を下から上へ押し上げ、叫び、観客をあおる。声援だけでなくブーイングも含めて、ジョコビッチは会場の空気を自分の力として取り込む。

「火事場のジョコ力」ジョコビッチはピンチになればなるほど、驚異的な力を発揮する。圭はこのジョコ力に何度も試合をひっくり返されてきた。

試合は・・・ジョコビッチ6-3,6-3,6-2の完敗だった。

最初から圭のプレイはシャープではなかった。攻めるわけでもなく、ミスが続く。試合後、体が疲れていて、思うようなテニスが出来なかったと言っていた。

セカンドセットの第1ゲーム、10分を超えるサービスゲームをキープした時、僕は「必ずチャンスが来る!そしてセカンドは取れる!」と解説していた。2ゲーム目、2本のブレークポイントがやってきた。しかし、2つとも、凡ミス。こんな圭は見たことがなかった。攻めたわけでもなく、繋げるボールでのミス。

サードセットは、心も体もエネルギーが残っていなかった。ジョコビッチのタフさをまずは褒めるべきだろう。そして錦織選手にしか感じることのできない、2週間の体力的な辛さ、そして炎天下からきた辛さ、ジョコビッチに対し13連敗しているという事実が脳裏に焼き付いている辛さ。全てがのしかかってきた状況だった。

解説では、僕は相当厳しいことを言っていたと思う。皆さんには、愛情として理解していただきたい。そして、錦織選手を誰よりも信じているからこその思いだということ。僕の伝えた言葉は、間違いないと思う。「頑張った、仕方がない、よくベスト4まで残った」・・・こんなコメントをしたら、圭はここまでの選手だということだ。

でも、怪我復帰後、全仏ベスト16、ウィンブルドンベスト8、全米ベスト4!これは見事です。よくぞここまで戻ってきてくれた!だからこそ、圭ならまだまだできると思っている。

より体力をつけ、タフになった圭を応援していきたい。

ありがとう 圭

切り替えて明日のなおみさんにすべてを注ぎます! 松岡修造