日々の思いを本気で伝える!修造コラム

2012年10月03日報道ステーション 山口観弘選手~常識破りの18歳

今回取材させていただいたのは、先日の岐阜国体の男子200m平泳ぎで、

いきなり世界新記録をたたき出したとんでもない18歳、山口観弘選手です。

山口さんが生まれ育った環境など、すべてにおいて、常識破りでした!

 

鹿児島県東部に位置する志布志市は、人口3万人ほどの小さな町。

この町から現れた世界一速いスイマーは、まだ高校生です!

ロンドンオリンピック金メダルのタイムをあっという間に飛び越えてしまいました。

 

レース後のインタビューで、

「憧れの北島康介さんの後をを継げるような選手になりたい」

と語っていた山口さんですが、その泳ぎは、

北島さんのゆったりとした伸びのある泳ぎに対して、

腕をテンポ良くかくという独特のスタイル。

 

18歳という若さ、常識破りの泳ぎ、でももっと驚いたのは育った環境です。

山口さんのコーチを訪ねてみると、そこは牛舎。

志布志DCの大脇雄三コーチは、なんと牛の獣医がメインの仕事で、

水泳はボランティアというんですから、驚かないわけがないですよね。

しかも、競泳経験はゼロだそうです。

そして、山口さんの練習環境にもビックリです。

志布志に一つしかないスイミングクラブですが、専用プールはなく、

市営プールを週に4日、間借りしている状態。

しかも、3コースしかか借りられないため、世界記録を出した今も、

隣には小学生や幼稚園児が泳いでいて、水深が1.1mと浅いため、飛込み練習もできないそうです。

この環境を乗り越えての世界新記録達成は、本当にすごい!

 

山口さんがこのクラブで水泳を始めたのは、4歳のとき。

専門的な指導を受けていないにも関わらず、小学5年生のときに、初の全国優勝を果たすと、

中学2年生のときには、中学生日本一に輝き、ジュニア日本代表入り!

そして、中学3年生のときには、国際大会で優勝!

素晴らしい記録ですが、大脇コーチが山口さんに言い続けていたのは「できない言い訳を探すな」という言葉。

厳しい環境の中では、言い訳を探そうと思えば、いくらでも出てくる。

でもそれを言っても何も変わらないし、自分の力にはならない、今できることに全力を尽くすだけです。

 

自分の泳ぎを速くするために、山口さんがどこから情報を得たのかというと、

小学生のときは「スイミング・マガジン」という雑誌、その他にも、

北島さんの日本選手権や世界選手権の泳ぎを録画して何度も何度も観たそうです。

小学生のときから自分でフォームを分析し、水泳オタクとよばれるほど研究し、

山口流平泳ぎを作り上げてきたのです。

 

中学の卒業を控える頃には、県外の高校から引く手あまただったそうですが、

それでも山口さんが選んだのは、大脇コーチのいる志布志でした。

高校って、水泳でいうと、めちゃくちゃ大事な時期だと思うのですが、

「自分を一番理解してくれているコーチから離れるつもりもなかったですし、

離れている自分が想像できなかったので県外には出なかった」という山口さん。

しかし一方で、大脇コーチは、成長していく山口さんを見て、このままではいけないと思い、

オリンピック前年の2011年に、ある人物に山口さんを託そうと考えます。

その人物とは、北島さんを育てた平井伯昌コーチ。

大脇コーチは、オリンピックへ行くなら、いつまでも志布志にいたって行けないと考え、

北島さんを育て上げた平井コーチに電話で直談判したところ、快く引き受けていただいたそうです。

 

そこが、山口さんが大脇コーチを心から信頼しているところなんですね。

「普通のコーチだったら、絶対に最後まで俺が見るって言うと思うけど、

自分のプライドとかすべてなくして、僕が一番強くなれる道を勧めてくれるのが大脇コーチ」という山口さん。

そして、去年11月から5ヵ月間東京へ来て、日本代表選手を多く抱える平井コーチのもとで、

一緒に練習を開始。

日本最高峰の施設とコーチ、志布志とは大きくかけ離れた環境で、今までにないほど泳ぎ込んだそうです。

そこで、山口さんが痛感した自分に足りなかったものは、「自分の甘さ」。

何であんなに頑張るんだろうと思ったときに、やはりそれは、

ロンドンオリンピックでメダルを獲るという強い想いがあるから、ということに気付いたそうです。

そんな気持ちに刺激され、絶対にロンドンに行ってやる!という想いが芽生えたんだとか。

オリンピックを強く意識するようになり、今年4月に臨んだロンドンオリンピック代表選考会では、

自己ベストを出しながらも、北島選手と立石選手に敗れて、惜しくも3位。

目標だったオリンピック出場を逃しました。

 

ただ、ここでも、落ち込む山口さんを奮い立たせたのは、またも大脇コーチの言葉でした。

それは、「オリンピックの優勝タイムよりも速いタイムで泳げ」ということ。

「オリンピックの金メダルよりも速いタイムで泳いで、しまった山口を連れて行けばよかったと思われるようなタイムを出せ」と。

しかし、ロンドンオリンピックで出た優勝タイムは、当時世界新だった2分7秒28。

「これは、世界新記録を出さないとダメじゃないか、これはまずい」と思ったそうです。

でも「世界記録を出せないとは思わなかった」というからスゴいですよね。

その裏には、冬場の泳ぎ込みに加え、代表落選以降、志布志に戻り、

大脇コーチと二人三脚で最善を尽くし、トレーニングしてきた自信がありました。

 

そして迎えた岐阜国体で、最高のスタートを決めた山口さんは、見事2分7秒01の世界新記録で優勝!

4月の時点では夢物語だった大脇コーチの言葉を実現した瞬間です。

すでに次の目標は見えている。

それは、「北島さんがオリンピック2大会連続金メダルを獲得しているので、その記録を抜きたい」ということ。

ということは、オリンピック3大会連続の金メダルっていうことですよね。

と思ったら、それだけではありません。

金メダル+すべてで世界新記録だそうです!

 

馬鹿げた夢だと思っているという山口さんですが、僕は何だかやってくれそうな気がしますね。

今回の取材で印象的だったのは、コーチというものはどういうものなのかということ。

コーチは選手のことをどれだけ理解しているか、

そして、選手がほしいときに、ほしい言葉を与えられるか、

正直、大脇コーチは技術的なことを教えることはできなくても、

山口さんにとっては、最高のコーチなんだなと強く感じましたね。

 

リオでも、山口さんの金メダル+世界新記録が見れるように、これからも応援していきます!

 

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