日々の思いを本気で伝える!修造コラム

2013年02月13日報道ステーション 髙梨沙羅選手~今季の課題は”飛びすぎ”

ソチオリンピックまで、いよいよあと1年!

今回取材させていただいたのは、スキージャンプの髙梨沙羅選手です。

今シーズンのワールドカップですでに6勝もあげている沙羅さん。

世界ランキングも1位!16歳にしてこの強さ!!

逆に飛び過ぎて困っているというから、さらに驚きです!

 

昨年12月、沙羅さんは練習中に着地に失敗。

救急車で搬送され、診断された結果は「脳しんとう」でした。

その原因は、なんと「飛び過ぎ」。整備されていないところまで飛んでしまったのです。

実は、沙羅さん、試合本番でも飛び過ぎることである問題に直面しているそうです。

それは、「飛型点」が伸びないこと。

飛型点とは、「空中の姿勢」「着地の姿勢」「着地後の滑り」という3つの要素を得点化したものなのですが、

沙羅さんの場合は、特に「テレマーク」が苦手なんだとか。

「テレマーク」とは、着地のとき、片足を前に出し、両手を広げる姿勢のことで、

正しいテレマークの足の幅は“1足半”、手は少し前に出して広げてアピールするのが理想と言われているそうですが、飛び過ぎてしまう沙羅さんは、傾斜がゆるやかな場所まで飛んでしまうことで、着地の衝撃が大きく、

片足を前に出す余裕がなくて、両足が揃ったままの着地になってしまっているのです。

そのため、たとえ一番距離を飛んで「距離点」をかせいだとしても、「飛型点」で逆転されてしまうことも。

 

足が出せなくて悔しい思いをしたことが多かったという沙羅さんが、

今シーズンから始めたのが、着地やテレマーク姿勢の練習、そして着地の衝撃に耐えられる体作りでした。

体幹を鍛え、もっとも効率よく衝撃に耐えられるフォームを探し、

さらには、雪の上でも得点ルールを利用したテレマーク対策をしてきたそうです。

それは、「ゲートファクター」といって、助走のスタート一によって加点・減点されるというルール。

基準の位置よりも上のゲートから助走すれば、スピードが増す分、

飛距離は出やすくなりますがポイントは減点されます。

沙羅さんのように飛距離に自信がある選手は、基準の位置よりも下にゲートを設置。

基準よりも下のゲートから助走すれば、スピードが落ちる分、

飛距離は出にくくなりますが、ポイントは加点されるのです。

何より、飛距離をおさえられる分、沙羅さんにとってはテレマーク姿勢がとりやすいという利点があります。

 

このように、テレマーク対策を行ってきた沙羅さんは、

ワールドカップ第12戦の1本目でトップに立つと、2本目が圧巻でした!

テレマーク姿勢も何とか決まり、飛距離は全選手中トップの94m。

さらになんと、飛型点でも全選手中トップの54.5点をマークしたのです!

 

最後に、僕はこんな質問をしてみました。

「じゃあ、これから沙羅さんの試合で、テレマークを入れていないときは失敗と思っていいですか?」

「いいです。」

沙羅さんから迷いなく出たこの力強い返事を聞いて、そんなに自分を追い込まなくてもと思いますが、

「それはやらなきゃいけない当たり前のこと」だそうです。

 

今季ワールドカップで6勝もあげていて圧倒的な強さを誇る沙羅さんですが、

お話を伺っていても、浮かれた様子が一切ない。

「テレマークをやって、板をたたんで初めて飛んだということになる」と言う沙羅さんは、本当に真面目なアスリート。

去年4月から体幹トレーニングを始め、同じ頃から栄養士さんにもついて、

朝昼晩食べているものをすべてチェックしてもらってるそうで、

その真面目さが、いい意味で沙羅さんの今の強さにつながっていると思いますね。

 

1年後のソチで、沙羅さんの見事なジャンプに華麗なテレマークが見られるのを楽しみにしています!!